ARCHIVES
TAGS
謎のお屋敷/爽籟軒
20110202.jpg

子供の頃住んでいた家の近くに、高い塀でぐるりと囲まれた一角がありました。

子供の背丈で見上げる塀ははるかに高く、塀の上には樹々の葉がたくさん揺れていました。

「この塀の向うには何があるんだろう」

小さな私は塀の向うが見たくて仕方ありませんでした。

塀の中に入る入口は探しても見つかりませんでした。

「この中はどうなってるん?」

親や周りの大人に聞いても誰も教えてくれませんでした。いや、誰も知らなかったのです。そこは入った人のいない「謎のお屋敷」でした。

秋には塀の向うの樹々の落ち葉が塀のこちら側の道路を埋めました。

私は家からほうきを持って出て道路の落ち葉をせっせと掃き集めました。塀の向うのお屋敷の人が私を見つけ「掃除してくれてありがとう」と塀の中に招いてくれないかな…なんて妄想を膨らませながら。

「いつの日か…この塀の向う側を知ることが出来る日が来るかな…」

小さな私のそれが小さな“夢”でした。


…数年前、その夢が叶いました。

それが尾道市久保町にある「爽籟軒(そうらいけん)」です。

塀の向うは…江戸時代の尾道の豪商「橋本家」の別荘でした。市に寄贈されたのを機に2007年から庭園や茶室が一般公開されるようになったそうです。

見上げていた塀は、新しいものに変わっています。低くなって中も見通せるようになりました。でも私は昔の塀に感謝しています。中の見えないあの塀のおかげであこがれや想像力をはぐくめたのかも知れないな、と。

塀の中に足を踏み入れた時は…なんとも言えない感慨がありました。

思いがけないカタチで叶う夢もあるんですね。
だから人生はおもしろいのですね。



今日も読んでくださった方、ありがとうございます。
ではまた明日。
固定リンク | comments(4) | trackbacks(0) | 記事編集
<<ビーズ作家・森本奈緒美さんの作品展 | 絨毯への道のり >>