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彼女のこと(3)
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前回までのお話(1)(2)

彼女のこと(3)

それから何日か彼女は学校に来なかった。結局なにがあったのか聞きようもないまま日が過ぎていった。

私に電話番号を聞いてきた女の子は、その日以来ピタリと私の側に来なくなった。時々ノートを見せてあげたりする程度の関係だったので最初のうちは気が付かなかったけど、考えてみると間違いなく“その日以来”その子は私を避けていた。

避けられているのを無理やりつかまえて「何があったのか」問いつめる気は起きなかった。わからないなりに、それ以上関わり合いになってはいけないような気がしていた。

しばらくして彼女が学校に来るようになってからも、なんとなくその事について聞きそびれているうちに随分と時間が経っていった。


「あの時…」

放課後、人がいなくなった教室で、ふっと思い出したみたいに彼女が口を開いたのはもう3学期も終わり頃のことだった。

「あの時、あんたあのまま行ったらまわされとったよ。」

まわされるが“回される”にしか変換できないくらい、その言葉はピンとこない遠くの場所から聞こえてきた。

そんなキョトンとした私の顔を彼女はちょっと呆れたように見つめながら話を続けた。

「あいつらは有名なんよ。何人も女の子が泣かされとるんよ。○○(私に声をかけた女の子)にもあんたを引きずり込むなって言っといたから。もう絶対かかわったらいけんよ。」

“回される”が“輪姦される”に変換され、私を引きずり込もうとした女の子の弱さだか悪意だかに気付いた私の表情の変化を、彼女は少し悲しそうな目で見ていた。

「…世界が違うんよ。」

彼女は最後にそうつぶやいて教室を出て行った。


彼女の思い出はここで終わり。

彼女とは学年が変わって席が離れてからはもうほとんど話をすることもなくなった。卒業後、彼女が高校に進んだのかそのまましばらくして結婚したのか、そのあたりの記憶もあいまいになってしまった。

それから1度も会うことなく彼女は亡くなった。


長い人生の色んな分かれ道で、そのたびに誰かに助けられながらここまで生きてこれたような気がする。彼女にもお礼が言いたかった。言うべきだったんだ、と彼女の死を伝えるニュースを読みながらそう思った。

あの時、彼女はたぶん私に語った以上のことをして私を守ってくれたんだろうと思う。私がしてあげられたことは小さいことだったのに。そして今でも私が出来ることなんて、こうして彼女の思い出を書いて残すことくらいなのに。


それでも…最後まで書けて良かったです。
長々と…読んで下さった方、ありがとうございました。
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彼女のこと(2)
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彼女のこと(2) ※(1)はこちらです。

その頃、私はクラスの中のある女の子から
「友達の男の子を紹介したいから電話番号教えてくれる?」
ともちかけられていた。

彼氏も好きな男の子もいなかった私は、特に深くも考えずにその女の子に家の電話番号を教えた。

早速男の子から電話がかかってきた。いや、彼はいくつか年上で“男の子”という感じではなく、女の子の扱いも慣れているふうで、楽しく話してるうちに気がつくと学校帰りに校門のところで待ち合わせる約束をしていた。

その約束の日の朝、教室に入ると隣の席の彼女が真剣な表情で私に向って言った。「今日の放課後○○○に会う約束した?」

なぜ彼女がその話を知っているのか?なぜ彼の名前を知っているのか?何もわからないままに「うん」と頷くと、彼女はちいさく舌打ちをして「あたしが話をつけに行くからあんたは絶対行っちゃ駄目。」と言い捨てて教室を出て行った。

その日はそれっきり彼女は教室に戻ってこなかった。

放課後、私は一人で帰った。

校門のところに彼はいなかった。

(明日に続きます)



今日も読んでくださった方、ありがとうございます。
ではまた明日。
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彼女のこと(1)
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いつもにも増して1日中机に向っている日々なのでまったくもって書くことがなくなりました(汗)

仕方ないので3日くらいに分けて3年程前に書きかけてそのままにしていたお話をここに載せようと思います。亡くなった同級生の思い出です。



彼女のこと(1)

風の噂で中学時代の同級生が亡くなったと知った。交通事故だった。亡くなったのはもう数日前の話だった。テレビのニュースで流れたらしいけど全然知らなかった。ネットで確認したら本当の話だった。

亡くなった彼女とは、中学を卒業して以来一度も会ったことはなかった。10代のうちに結婚したとか、子供を連れて実家に戻ってきたらしい、とか…うちの母親から何度か彼女の話題を聞いたことがあった。その程度。

彼女はとても綺麗な子だった。いや、もう「女の子」とは呼べないほど、周りから浮き上がる程に彼女は綺麗で大人びていた。

そして学年の不良達の中で一番強かった。

手のつけようが無い問題児だと匙を投げられていた。たまに授業に出ている時は机に突っ伏して寝ていた。でも頭は悪くなかったと思う。どちらかというと、頭が良くて早熟な故に色んなことが見えすぎて自分にも周りにも絶望してるような感じに見えた。

私は1年近く、彼女の隣の席に座っていた。否、座らされていた。担任からの指名で。

彼女は周りの“普通の子達”から怖がられていたのでトラブルを避けるために担任が私に白羽の矢を立てたのだと思う。

その頃の私は、誰かと衝突したり、誰かを色眼鏡で見てつき合い方を変えたり、そういうことをしないような感じの子だったのだと思う。中学時代はまだ成績も良かったしマジメだったので、私が彼女と仲良くすれば、彼女も少しは行動が変わるかも…と期待もされていたのかも知れない。

担任の期待にはまったく気がついてない私だったけど、彼女にはごく普通に接していた。…といっても、彼女と友達になったわけではなかった。彼女は相変わらす授業中寝ていたり突然帰ったりしていたし、私に声をかけてくるのも、ごくたまに気が向いた時だけだった。

授業の中で隣の席の子と一緒になにかの作業をしたりする機会があっても彼女がそんな感じなので、私はぽつんと一人で作業することも多かった。

何年か後になって、母親が言っていた。「あの頃、なんでうちの娘だけがそんな苦労をさせられるのかと担任に文句を言おうと思ったことが何度もあった。」と。

私自身は彼女の隣に座らされている状態にたいして不満もなく、あまり疑問にも思ってなかったので、家でもその件に関して特に愚痴ったりするようなことはなかったと思う。

母親がそんなもやもやした気持ちを抱えていたなんて全然知らなかったので、そう聞かされてびっくりした。


ある時彼女が、自分で開けたピアスの穴が化膿して耳たぶが半分腐ったような状態になったのを私に見せてくれたことがあった。

「それは病院に行ったほうがいいよ!」びっくりした私はその時もその後も何度かそう言ったけど、結局、彼女は病院には行かなかった。

今ならわかるんだけど。

彼女は心配してくれる人が欲しかっただけなのだと。素直に、ただ単純にバカみたいに心配していた私の“気持ち”だけで、彼女は満足だったんだと。


(明日に続きます)



今日も読んでくださった方、ありがとうございます。
ではまた明日。
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“こないだ” って
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仕事場に母がやって来ました。

年賀状を作って印刷してあげる約束をしていたのです。

ハガキと一緒に「これを取り込んで作れる?」と持って来たのは “ちぎり絵のうさぎ”

「かわいいじゃん。これお母さんが作ったん?」と聞くと

「うん、まだヘタクソじゃけどね」と母。

「いいよ。これ使って作ろうよ」と、早速スキャニングを始める私の横で

「こないだ(←この間)使いそびれとったヤツが…活かせてよかったー」

…ん?…こないだ?

「お母さん…こないだ…って??」

「うん、こないだのうさぎ年の時に使いそびれてねえ…」

12年前ですか!(笑)

12年前を“こないだ”と言ってのけることも…

12年前の作品を大切に取ってあることも…

いやあ…かないませんね(笑)

ほのぼのした午後のひとときでした。



今日も読んでくださった方、ありがとうございます。
ではまた明日。
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ノルウェイの森で迷い中です。
norwegianwood.jpg映画「ノルウェイの森」公式サイトより

先週末に公開された「ノルウェイの森」

ちらほらと映画を観た人達の感想が聞こえてきますが…

ちょっと…微妙?な感想が多いみたいですね。

原作は何年かごとに読み返していて…もう何回読んだのかな?

最初は私も主人公達の当時の年齢に近くて、読んでいる間中、ヒリヒリするような痛みを感じていた記憶があります。

今では小説の冒頭に出てくる現在の主人公の年齢の方に近くなって…思い出よりも“現在の心境”の方に感情移入してしまいます。ヒリヒリするような痛みも…遠く切ない鈍い痛みに。

それこそ“もう二度と戻らない時間”ですね。

さて、映画。実はすごく迷い中です。自分の中の原作の世界が壊れそうな予感120%なんですが(汗)でも観てみたいような…。酷評を鵜呑みにせずに自分で判断したいような…。うーん…。

まあ現実には映画館に足を運ぶ時間がなさそうなので…DVD出てからゆっくり考えようと思ってますけど。

映画をご覧になった方、ぜひ感想を教えてくださいね。



今日も読んでくださった方、ありがとうございます。
ではまた明日。
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